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協調性がない職員を解雇できる!?

医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A

Q 周囲の職員と協調性を保つことなく、勝手気ままに仕事をする看護師がいます。多くの職員がこの看護師の言動に振り回され、疲れてしまっていることから、できれば解雇したいと考えています。問題ないでしょうか?

A 医療機関においては、職場内でチームワークを組んで仕事をすることは大変重要なことです。しかし、具体的な指導を重ねることなく解雇をすることは、法的に問題がありますので、慎重な対応が求められます。

詳細解説

看護師の職務は、医師や他の職員と連携を図り、患者とも上手くコミュニケーションを取ることが必要とされる仕事であることから、協調性は欠かせません。上司や仲間に無礼な態度を示したり、独善的な行動を取ることによって職場内での孤立を招き、その結果、周りの職員が精神的に疲弊し、職場の雰囲気が悪くなってしまうという例は少なくありません。そのため、こうした職員を解雇して職場内の不活性要因を除去したいという気持ちはよく分かります。

しかし、職員の解雇については、労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められており、客観性のない理由による解雇は、解雇権の濫用とされ、解雇そのものが無効となることがあります。

今回のご質問にある協調性のない職員の解雇を考えるにあたっては、「カジマ・リノベイト事件(東京高裁・平14.9.30)」が参考となります。この事件では、協調性を欠く数々の問題行動を繰り返したことを理由に行った従業員の解雇について、裁判所は、それらの事実を一つ一つ取り上げると比較的些細なものが多いように思われるとしながらも、企業全体として統一的・継続的な事務処理が要求される事柄に対し、上司の指示に従わず自己のやり方を変えないという態度が顕著であり、この協調性の欠如が、企業全体の非効率や過ちにつながり、支障が生ずると判断しました。そして、4 回の譴責を通告されても改善する姿勢がみられないこと、弁明する機会が与えられていたこと、就業規則に「勤務成績又は能率が著しく不良で、就業に適しないと認めるとき」との解雇条項があることなどから、解雇権の濫用には当たらず、解雇は有効としました。

以上より、まず、今回の協調性が欠如した職員に対しては、具体的にどういった点に問題があるのかを本人に伝達し、改善を促す必要があります。こうした改善指導は、あとから指導をした、されなかったというトラブルを防止するためにも文書を用いて行ったり、メモを残すといった管理は行うべきです。このように指導を重ねて記録を残すことで客観性を高めることができ、改善がほとんどみられず、最終的に解雇に導かれるということは、やむを得ないと考えることができます。

もっとも、協調性の欠如は、そもそも本人だけに問題があるのかという点も注意を払わなければなりません。つまり、管理者が十分な管理やコミュニケーションを図ることなく、無理難題を押し付けているような場合には、独善的に業務をやらなければならないようなこともあり、そうしたことを協調性の欠如と取り上げていては、職員自身も浮かばれないでしょう。そのため、管理者は、自分自身が部下に対しての教育者であるという自覚を持ち、高い頻度でコミュニケーションを図っていくことも忘れてはなりません。

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