正職員で募集した職員にパートタイマーとして働いてもらいたい!?
医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A
Q 求人広告で「正職員募集」と案内したところ、運がよく複数の良い人材の応募がありました。1名は正職員として採用しますが、他の1名についてはパートタイマーとして働いてもらうことができないかと考えています。問題はありませんか?
A 正職員ではなくパートタイマーとして採用するのであれば、後から「虚偽の求人広告に応募してしまった」といったトラブルにならないよう、応募者本人に対して詳細に事情を説明し、同意を得てから働いてもらう必要があります。
詳細解説
新たに職員を募集する場合、あらかじめ採用人数を決めて行うことが一般的です。なかなか良い人材が集まらないということが多くありますが、タイミングによっては運よく良い人材が複数応募してくることもあります。この場合、複数の応募者をすべて正職員として雇用すれば、人件費増に繋がるため やむを得ず採用者以外の応募者を不採用にしなければなりません。
しかし、近い将来、職員の離職等によって新たに人材が必要になった際のことを考えて、 当面はパートタイマーとして働いてもらい、必要な時期に正職員に転換して働いてもらうことができないかと考えることもあるでしょう。
この場合、そもそも本人が正職員としての就職を希望して応募してきている中で、パートタイマーとしての雇用を行うことは、求人広告そのものが虚偽であったという トラブルになる可能性があるため、注意が必要です。正職員としての良い条件を提示して人材を誘引し、求人広告とは異なる処遇を提示されれば、 誰でも気分が良いものではありません。
実際、職業安定法第65条では「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは 労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者」に対して罰則規定(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)を設けていますので、 応募者が行政機関に通報すれば、ハローワーク等から調査を受ける可能性があることは否定できません。
以上のようなトラブルを招かないようにするためには、まず応募者本人に対して事情を説明し、納得の上、パートタイマーとして働くことの同意をとっておくことが 重要です。
もっとも、ほぼ同時期に他方で正職員として採用される職員がいることから、配置等については最大限の配慮は行うべきであり、また正職員登用の見込みがあるのであれば、本人の生活設計のことも考え、およそどのくらいの期間をパートタイマーとして働いてもらうのかという点についても 伝えていくとよいでしょう。
また、実務的には今回のご質問のような応募者多数ということよりは、1名の応募しかなかったが正職員として働いてもらうことに抵抗を感じる、 というケースも多いと思われますので、求人広告には「正職員募集」とだけではなく「正職員・パートタイマー同時募集」といったように工夫を凝らすと面談の際に、 柔軟な話し合いができるのではないかと思います。