変わる医療制度 今、注目の動き
今回は、医療制度にまつわる昨今の行政の動きを追ってみたいと思います。日々、検討会や調査等が実施され、医療法の改正も視野に入れた議論が進んでいます。 テーマは様々ですが、3つに注目しました。
新専門医制度は平成29 年度開始目標
専門医としての質の担保と能力評価については統一化されておらず、医師と患者との間でその捉え方にギャップが生じています。
そこで患者から信頼される医療を確立していくために、現状の専門医制度を見直す必要があるとされ、厚労省の「専門医の在り方に関する検討会」が議論を重ねています。 同会が4月22日に公表した報告書では、新たな専門医の定義を「それぞれの診療領域における適切な教育を受けて十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」とし、中立的な第三者機関での統一評価・認定等、仕組みについても考察しています。
また、「医師は基本領域のいずれか1 つの専門医を取得することが基本」とされ、認定は経験症例数等の活動実績を要件とし、 広告制度の見直しを含めた方向性が示されました。この新たな専門医の養成を、平成29年度を目安に開始したいと取りまとめられています。
医療事故調査制度は紆余曲折
医療事故調査制度の整備に向けては、厚労省「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」が4月18日に提示した方向性(案)によれば、 調査対象をまずは「診療行為に関連した死亡事例」としています。そして、調査は医療機関による院内調査と、第三者機関による調査の2 段階を設定し、 第三者機関による調査は、遺族又は医療機関から調査の申請があった場合に行われると記載されています。
ただし現状では、第三者機関の構成員や調査費用負担、報告義務や警察への通報の範囲等、数多くの点で意見の擦れ違いが生じています。同検討部会は、医療法改正として年内にも法案を国会に提出する見通しです。
医療法人制度も見直しの動き?
社会保障制度改革国民会議(内閣設置)で行われている、医療や介護分野についての議論の中で、医療法人や社会福祉法人制度の見直しについても検討されています。たとえば、まちづくりの参画、コミュニティ形成のための医療機能の分化・連携のための医療機関の再編等を可能とさせること、資金調達手段を促進する制度を作ることなど総合的な規制の見直しが必要であることが議論され、整理されています。
新型インフル発生前に、「診療継続計画」策定を
内閣官房有識者会議より発表された「新型インフルエンザ等対策政府行動計画(案)」では、医療機関に対し、新型インフルエンザ等の発生前から院内感染対策や医療資器材の確保等に加え、発生後の診療体制を含めた診療継続計画の策定及び地域医療連携体制の整備が求められています。