『職員のマイカー通勤を認める際のポイントとは?』
医療機関でみられる人事労務Q&A
Q当院の職員の多くはマイカーで通勤をしていますが、職員が通勤途中で事故を起こした際には、当院にもリスクがあるという話を聞きました。具体的に考えられるリスクとその対策について教えてください。
A職員が交通事故を起こして加害者になってしまった場合、億単位の高額な損害賠償が本人に請求されることもありますが、業務中や通勤途中での事故の場合には、使用者責任として医院も賠償請求されるリスクを負う可能性があります。そのため、マイカー通勤については許可制とし、車両の使用に関わるルールをまとめ、確実な運用をしておくことが重要です。
詳細解説
1.交通事故での医院の責任(使用者責任)
交通事故発生時には、加害者は救急車を呼ぶなどの道義的な責任のみならず、行政上の責任、刑事上の責任、民事上の責任という3つの法律上の責任を負います。その事故が、業務中や通勤途中で発生した場合には、民法第715条の使用者責任の規定に基づき、医院の責任が問われることがあります。具体的には、職員本人に十分な賠償能力がないような場合には、医院に対し、賠償請求がなされることがあります。
2.マイカー通勤を認める際のポイント
自動車を運転する際には、事故のリスクを完全になくすことはできませんので、できればマイカー通勤は認めないという対応を取りたいところですが、公共交通機関がないようなケースにおいては、マイカー通勤を認めざるを得ない場合もあるでしょう。そのような場合には、少なくとも次のようなルールを定めた上で許可制とし、許可申請書を提出させることが重要です。
- 運転免許証の確認
運転免許が失効していないか確認するため、マイカー通勤者には毎年1回以上、一定期日に運転免許証の写しを提出してもらい、確認することが必要です。 - 自動車保険(任意保険)への加入義務付け
交通事故によって医院に賠償責任が及ばないようにするためには、職員の通勤車両について一定の基準を超える自動車保険(任意保険)への加入を義務付けることも考えられます。一般的には限度額が対人・対物無制限の保険への加入を義務付け、その保険証券等の写しを提出させるなどの対応を行います。 - 誓約書の提出
マイカー通勤を認める場合には、医院の敷地内における車上荒らしによる盗難や事故、道路交通法違反といった問題が発生する可能性があります。そういったトラブルに医院が振り回されないよう、車両使用に関する誓約書を提出してもらうとよいでしょう。