年次有給休暇の付与日を指定してもよいか
医療機関でみられる人事労務Q&A
Q職員には、法律どおり入職6ヶ月のタイミングで年次有給休暇を付与していますが、その後の年次有給休暇の発生日が職員の入職日によって異なり、管理が煩雑です。特定の日に一斉に付与することはできないのでしょうか?
A事業主は、入職日から起算して6ヶ月後に10日、1年6ヶ月後に11日など、勤続期間に応じた年次有給休暇を与えなければなりません。しかし、この付与のタイミングは労働基準法に定められた最低基準であるため、その日よりも前倒しで年次有給休暇を付与するのであれば、特定の日に一斉に付与しても差し支えありません。
詳細解説
医療機関においては、中途採用の職員が多く見られるため、入職日が職員ごととなり、当然6ヶ月後の年次有給休暇を付与するタイミングもばらばらになります。そのため、年次有給休暇の付与や更新の管理が煩雑になりがちです。
この管理の負担を軽減するために、特定の日を年次有給休暇付与の基準日として設定することが考えられます。年次有給休暇を基準日に付与する方法として、次の2つの方法が多く見られます。
- 1ヶ月に1回
この管理の負担を軽減するために、特定の日を年次有給休暇付与の基準日として設定することが考えられます。年次有給休暇を基準日に付与する方法として、次の2つの方法が多く見られます。
- 1年に1回
“毎年4月1日”など、基準日を年に1回設定する方法です。この場合、職員ごとの実際の入職日に関わらず、全職員について基準日である4月1日に年次有給休暇を一斉に付与することになります。この場合には、入職して6ヶ月で10日という法律の基準を下回ってはいけないという点に注意が必要です。
例えば、9月1日に入職した職員については、その6ヶ月後の翌年3月1日に年次有給休暇が付与されることから、基準日が4月1日であることを理由に入職後7ヶ月を経過してから付与することは法律違反となります。そのため、1年に1回の基準日を設定する場合は、例えば初年度については法律どおり入職後6ヶ月を経過した日に付与し、翌年度から4月1日にするといった対応が考えられます。
このように年次有給休暇の基準日を定める場合には、法律を上回る日数の付与が必要となること、そして職員間で不公平が生じてしまうという点がデメリットとして挙げられます。
よって、年次有給休暇の付与の方法については、そうしたデメリットと、事務負担の軽減というメリットを比較考量して対応を決定することが必要です。また、就業規則などに定めたうえで、職員間の不公平が生じてしまう場合には、職員にきちんと説明し、制度の理解を求めておくことが望まれます。