介護業界はAIでどう進化するのか
今年6月、囲碁AI「アルファ碁」が世界最強棋士に完勝しました。高齢化社会で一層期待を集める自動運転車にも、AIの技術は不可欠です。今回は、発展著しいAIが今後の介護業界をどう進化させるのかに注目します。
行政分野もAIに大きな期待
6月9日に閣議決定された成長戦略「未来投資戦略2017」では、モノづくり、流通、教育、科学分野に加え、健康・医療・介護の領域でのAI活用が強く打ち出されました。
また、国税庁が公表した「税務行政の将来像」には、税務相談対応や、申告内容の誤りへの対応、税務調査等の場面でのAI活用が計画されています。
介護分野については、厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書※」の中で示された重点項目の一つとして、「介護・認知症」が挙げられています。
データ収集で、きめ細やかな開発へ
同報告書による介護分野のAI開発の工程表は下図のとおり。高齢者の生活の質の維持・向上と介護者の負担軽減の観点で、開発と普及が進められます。
例えば、介護ロボット技術にAI技術を付加することで、生活事象や生活リズムが予測できます。膀胱内の尿量の変化を超音波センサーで読み取り、AIで排せつのタイミングを予測するシステムは、既に実用化段階まで進んでおり、高齢者の尊厳を保ちつつ介護が効率化できると注目を集めています。
今後は、認知症高齢者の生活環境の改善等に向けたAI開発にも焦点が当てられています。
不安解消も大きな課題
一方で、生身の人間ではなくAIやロボットによる介護に不安を覚える方も少なくないでしょう。同報告書でも、「保健医療分野では、個人的な感情等の客観的データでは捉えきれない事象や意向を患者・国民やその家族が抱えている場合も多い。
客観的なデータに基づいてAIが提案する保健医療サービスだけでは患者・国民が得る満足感にも限界がある。」と、AIの限界についても言及しています。
2020年はすぐそこの未来。AIによって、いかに快適かつ尊厳ある生活を拡大できるのか。実用化に向けた取組が始まっています。
※厚労省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000169233.html