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金銭を横領した職員を解雇したい

医療機関でみられる人事労務Q&A

Qある職員が業務で取扱う金銭を横領していることが発覚しました。そのため、その職員を解雇しようと思いますが、注意すべき点があれば教えてください。

A業務上横領の場合、程度によっては、管轄労働基準監督署長に解雇予告の除外認定を受けた上で懲戒解雇することが考えられます。ただし、その認定には時間を要するため、退職勧奨を行い、本人との合意により雇用契約の解消を行う方法も考えられます。

詳細解説

医療機関では、日常業務の中で金銭を扱うことが一般的です。基本的には、信頼のおける職員に任せるものの、虚偽報告等によって分からないように金銭を横領していることもあります。これは、労使の信頼関係を失墜させる由々しき行為ですので、速やかに解雇をしたいという気持ちは当然かもしれません。

横領事件が発生した際には、まず、その事実確認を行う必要があります。単なる勘違いや計算間違いということもあり、無実の罪を着せられたということがないように、確実に事実関係を把握するところから進めなければなりません。もっとも、こうした調査をしていることを察知して、証拠隠滅を図るケースも想定されることから、疑惑が高い職員に対しては、労働基準法第26条に定める休業手当を支給した上で、自宅待機を命じることも視野に入れておきましょう。

そして、横領が確実であると判明した場合、懲戒処分としての解雇を検討することになります。その際、例えば1,000円を横領しただけで解雇にするのかといったように、量刑の程度の問題が生じます。

また、悪質性や常習性の問題の背景等も考える必要があるので、これらを勘案して、懲戒処分を行うことになります。もっとも、横領は、労使の信頼関係を著しく崩壊させる行為ですので、懲戒解雇を検討することが多いと思われますが、懲戒解雇処分であったとしても、原則として、労働基準法第20条に定める、解雇の予告または30日分の解雇予告手当を支払うことが求められます。

この支払いを行わないためには、管轄労働基準監督署長の「解雇予告除外認定」を受けることが求められますが、実務的には申請から認定を受けるまでに1ヶ月程度の期間を要することがある他、事案の程度等によっては認定がされないこともあります。そのため、今回のようなケースで被害額が少ない場合には、退職勧奨を行い、本人との合意により雇用契約を解消することが実務面では多くみられます。

いずれにしても、管理する側が十分な管理をしていなかった等といった背景もあるため、横領事件が発生した際には、顧問の社会保険労務士と相談をしながら対応を進めていくことがよいでしょう。

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