インフルエンザの罹患が疑われる職員の対応
医療機関でみられる人事労務Q&A
Q 今朝、出勤をしてきた職員が体調不良のようですが、その症状からはインフルエンザに罹患している可能性が考えられます。職場内の感染拡大を避けたいため、自宅療養を命じたいのですが、問題ないでしょうか?
A 高熱がある等の症状であれば就業を禁じ、自宅療養により治療に専念してもらうことになりますが、症状が見られない中、予防的に自宅療養を命じる場合には、休業手当の支払いが必要となる場合があります。
詳細解説
職員がインフルエンザに罹患をすれば、感染拡大によって運営体制が維持できなくなるのみならず、患者にも迷惑を掛けてしまうことになります。よって毎年この時期には、うがいや手洗いの徹底を励行している医療機関が多く見られます。
ところが、徹底して管理をしていても、一定確率で感染をしてしまうことは避けられません。そのような場合、業務に対する責任感の強い職員であれば、勤務に穴を開けることができないと、無理に出勤してしまうことも少なくないようです。
そうした中、感染症罹患の疑いがある職員が出勤をした場合には、まずは体温計で熱を測る等によって症状を把握し、罹患の疑いが強いのであれば、就業を禁じる必要があります。
これは、労働安全衛生法第68条において「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない」と規定していることからも根拠が明確です。
その上で、感染拡大防止のため、本人より早退届等を提出してもらうことが基本的な対応となります。
一方で、罹患しているか否か判断できない場合で、事業主の判断で予防的に自宅待機を命じるのであれば、労働基準法第26条「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」の規定に該当するため、休業手当を支払わなければなりません。
医療機関に勤務する職員であれば、万が一、感染が拡大をしたらどういった影響が生じるのかという点は当然に理解しておくべきですが、判断に迷いが生じないように出勤の取扱いは予めルールとして決めておきたいところです。
例えば、感染をした場合には、医師が就業可と認める時期まで出勤停止とし、疑わしい場合には、必ず医師の診断や検査を受ける等といったことは、最低限のルールとして職員に浸透させておく必要があります。
こうしたことは、職場のルール集である就業規則等においても明確に定めておくとよいでしょう。