性同一性障害の職員に関する対応
医療機関でみられる人事労務Q&A
Q 先日、採用した職員が、性同一性障害であることを打ち明けてきました。このようなことは初めてであり、正直戸惑いましたが、職場でどのような対応を心掛ければよいでしょうか?
A 「性同一性障害」であることを職場内で公にするか否か本人の意思を確認し、公にする場合には周りの職員に理解を促すと共に、トイレや更衣室などに関する配慮や、他の職員の理解を深めるための勉強会等を開催するとよいでしょう。
詳細解説
「性同一性障害」とは、身体の性と心の性が一致しないことから生じる医学的な病名ですが、例えば男性であっても趣味が女性的であったりすることから、物心が付いた頃から心無いいじめを受けた経験がある人も多いというのが実情です。
そのため外部には可能な限り隠し続けたいと思うことが多く、それがかなりのストレスとなっており、せめて今後働くにあたって長い付き合いとなる勤務先の事業主にだけは理解をしてもらいたいとの思いから、打ち明けるケースは少なくありません。
そうした中で、まず事業主が注意をしなければならないのがアウティングの問題です。
アウティングとは、本人の了承を得ずに性同一性障害等の性のマイノリティであることを職場の職員などに公にすることですが、悪気なくうっかりと話してしまうことで、本人に絶望感を与えるような不安定な精神状態になることもあり、最悪の場合には自死につながる可能性もあるため、最大限の注意を払わなければなりません。
もっとも、現実に勤務してもらう上では、本人がトイレや更衣室の利用についても心の性と異なる性のトイレ等を利用することに苦痛を感じるケースが多いため、まずは、本人に職場内で性同一性障害であることについて公にしてよいのか否かを確認し、可能な配慮の検討を進めることになります。
例えば、トイレは一部を男女の共有とすることで、周りの職員の理解が深まれば、拒否感を示す職員も少なくなります。
本人がどの程度までの配慮を求めるのかという点も含めて、事前の確認は行っておきたいものです。
そもそも性同一性障害に限ることなく、ゲイやレズビアン等を含めた性的マイノリティは、国民の約13人に1人の割合で存在するといわれています(連合による『LGBTに関する職場の意識調査』2016年8月)。
これは、左利きの人の人口割合と同程度ともいわれていますので、実は一般的に多く存在していることが分かります。
そうした現実を考えると、職場内での理解を深めるための勉強会を開催する等といった取組を行うことで、差別のない組織風土を涵養(かんよう)させることにつながります。
今ではインターネット上に性的マイノリティに関する資料等があるため、それらを参考にしながら、職員の理解を深める努力もしていく必要があるのではないでしょうか。