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自宅へ持ち帰った仕事の処理は残業時間!?

医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A

Q 職員が勝手に自宅で仕事に関する書類作成を行い、その作業に要した時間を時間外労働として残業申請書を提出してきました。こうした時間も労働時間として扱わなければならないのでしょうか?

A自宅での業務処理について使用者が知ることなく、職員が勝手に行ったのであれば基本的に労働時間として扱う必要はありません。しかし、通常の勤務時間内で処理することができない業務量が与えられ、自宅で業務を行っていることを黙認している場合には、労働時間として扱わなければならないこともあります。

詳細解説

現在、多くの家庭では、パソコンやプリンター、インターネット環境が当然の如く備わっており、自宅に居ながら職場同様に仕事ができる環境が整ってきました。そのため、抱える業務量が増加
して期限内に処理をすることができないような場合には、職員が業務の一部を持ち帰り、自宅で処理をするという例もあるのではないでしょうか。こうした自宅における業務の処理については、その時間が労働時間であるのか否かという点について労使間で認識の違いが生じやすく、今回のご質問のように割増賃金の支給を巡るトラブルは相当数あるように感じます。

そもそも労働基準法第32 条における労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であるという考えが裁判例(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁一小・H12.3.9 判決)で確立されており、指揮命令の有無がまずは判断のポイントとなります。とはいえ、自宅という本来の就業場所とは異なる場所において指揮命令が及ぶのかという点は判断が難しいため、以下の基準で労働時間であるか否かを総合的に判断することになります(安西愈「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務」中央経済社)。

  • 一定の場所的な拘束の有無
  • 一定の時間的な拘束の有無
  • 一定の態度ないし行動上の拘束の有無
  • 一定の労務指揮的立場から行われる支配ないし監督的な拘束の有無
  • 一定の業務の内容ないし遂行方法上の拘束の有無

今回の自宅における業務の遂行について考察すると、勝手に持ち帰って仕事をしていたということは場所的・時間的な制約を受けることがないため、労働時間と考えるには無理があるように考えられます。ところが、通常の勤務時間を超過して勤務しなければならないような状況であり、そうした事実を使用者が黙認をしていたのであれば、黙示の労働時間としてその時間は割増賃金支給の対象となります(S25.9.14 基収第2983 号)。

もっとも、自宅における業務の遂行は、こうした労働時間の問題だけではなく、情報管理面の問題もあることに注意しなければなりません。「職員がデータを自宅に持ち帰る途中にそのデータを紛失した」「自宅で仕事をしていたらインターネット回線を通じて機密データが流出してしまった」といった類のトラブルは枚挙に暇がなく、事実が公になれば医療機関の信用を著しく損なうことにもなります。

以上を考えると、基本的には自宅で業務を遂行すること自体、禁止にすべきであり、十分に管理が及ぶ場所で遂行してもらうといったルールに改める必要があります。また、職員同士が協力して効率的に業務ができるように協力体制を整え、お互いが声を掛けて助け合う風土にも変えていく必要があるでしょう。

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