職場での宗教勧誘行為をやめさせたい
医療機関でみられる人事労務Q&A
Q 最近、職場内で宗教の勧誘を行っている職員がおり、他の職員から迷惑であると苦情が出ています。その勧誘は勤務時間中ではなく、休憩時間中に行われているのですが、これをやめさせることは問題ないでしょうか?
A まずは、その勧誘によって迷惑を受けている職員がいることを伝え、やめるよう求める必要があります。それでも改善が見られない場合には、程度によっては制裁処分を検討しなければならないこともあるでしょう。
詳細解説
職場内での宗教関係のトラブルについては、まるでタブーのように扱って、何も対策を講じない医療機関が少なくありません。その結果、宗教の勧誘を受けた職員がストレスを抱えて退職してしまったり、職場内の風土が悪化することもあることから、放置することはできません。
確かに、日本国憲法では第20条において「信教の自由」が認められていますが、職場内で他の職員に対して自身の信条を押し付けることは、異なった宗教観を持っていたり、宗教に関して無関心である他の職員にとっては不愉快に感じるものです。
従って、まずはそういった行為をやめるように注意をする必要があります。もっとも、その注意の仕方によっては、宗教そのものを否定するような言い方となり、ハラスメント問題に発展してしまうこともあるため、相手の立場や気持ちを理解してもらえるような言い方を心掛けたいところです。
なお、休憩時間中における宗教の勧誘については、そもそも休憩時間は自由利用が原則であることから制限が難しいと考えてしまいがちですが、通達において「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えないこと(昭和22年9月13日発基17号)」と示されています。医療機関としてはこうした通達を根拠に制限を加えていくことを考えていくとよいでしょう。
以上のように本人に対して注意等を行うことによって、多くの場合は改善が期待できるでしょうが、それでもなお改善がされない場合には、職場規律の乱れを理由に制裁処分の検討を行うことも必要になります。
ただし、労働裁判例を紐解くと、些細な問題を大袈裟に捉えて職場規律の乱れを前面に出すと、その制裁処分が無効になることもあるため(明治乳業事件・最高裁・昭和58年11月1日判決)、職場規律の乱れの程度や本人の改善状況を正しく見極めたいところです。