特定の金融機関への給与振込みを嫌がる職員の対応
医療機関でよくみられる人事労務Q&A
Q 新たに採用をした職員に対して、取引先の金融機関の口座へ給与を振込みたいと思います。ところが、本人から「そのように金融機関を指定するのはおかしいのではないか」と言われ、困っています。
A 特定の金融機関への給与の振込みを強制することはできません。特定の金融機関への振込みを行う際には、本人の同意が必要となります。話し合いによって理解をして頂くか、同意が得られない場合には、本人指定の金融機関への振込みを行うことが求められます。
詳細解説
医療機関の中には、職員の給与を振り込むにあたり、取引のある金融機関で口座を開設してもらい、その口座に振り込むというケースが少なくありません。
給与計算の締め日と支払日の日数が少ない場合には、振込み納期にあたって多少柔軟に対応してくれる金融機関があったり、手数料が無料になったり、更には診療報酬を含めたすべてのお金の流れが一連で把握することができる等のメリットがあることから、こうした方法を採るようですが、一方でご質問のように採用した職員から給与を振り込む金融機関を指定するのはおかしいのではないか、という声が上がることもあります。
そもそも、給与の支払いについては、労働基準法第24条において「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められていることから、現金払いが原則となります。従って、いまでは一般的になっている金融機関の口座への振込みにあたっては、本人の同意が必要となることを忘れてはなりません。
もっとも、職員も公共料金の引き落としなど利便性の観点から、自らが指定する金融機関への支払いを希望することが少なくありません。そうした場合、上記のように医療機関の都合によって特定の金融機関の口座を強制することはできず、本人の希望を尊重して対応することが求められます。
どうしても必要性がある場合には、本人に対して、金融機関との取引の関係上何とかお願いしたい旨を伝えるなどして、理解してもらうことが必要となります。
それでも頑なに断る場合には、本人の指定する金融機関への振込みを行うといった取扱いをせざるを得ないでしょうが、採用後にこうした問題で関係がこじれることは労使ともに望まないことですから、採用にあたって説明をしておくなどの配慮も検討すべきでしょう。