医療機関や福祉施設における職員の能力開発事情
医療機関や福祉施設等(以下、医療,福祉という)においても、職員の能力開発や育成に取り組むことは重要です。ここでは今年3月31日に最新情報が発表された、厚生労働省の「能力開発基本調査」(※)などから、医療,福祉における能力開発や育成の現状をみていきます。
一人当たりは、5,000円程度
まず医療,福祉が、労働者一人当たりに支出する、OFF-JT費用と自己啓発支援費用の推移をまとめると以下のようになります。
医療,福祉がOFF-JTに支出した費用は、平成24年以降は増加傾向にあります。また自己啓発支援に支出した費用も、24年以降は増加しています。産業平均と比較するとOFF-JT費用については半分以下、自己啓発支援費用はやや少なめ、という年が多い状況です。
今後の能力開発費用
次に今後3年間の職員の能力開発への支出見込みについて、OFF-JTの費用に関する結果をまとめると下図のようになります。医療,福祉では、増加させる予定という回答が正社員、正社員以外の両方で割合が40%を超えて、最も高くなっています。
ちなみに、自己啓発支援の費用についても、正社員では増加させる予定の割合が最も高くなっています。医療,福祉においては、職員の能力開発に積極的に取り組んでいこうという企業が、産業平均に比べて多くなっていることが伺えます。
人材育成を行う上での問題点
最後に、職員の育成や能力開発を行う上で問題があるとする割合をみると、産業全体では75.9%、医療,福祉では89.8%で、医療,福祉では問題があると考える割合が高いことがわかりました。
医療,福祉で、問題点として回答割合が最も高かった項目は、「人材を育成しても辞めてしまう」で、63.3%となりました。次いで「人材育成を行う時間がない」が59.1%、「指導する人材が不足している」が56.6%と、これらの項目が50%以上の回答となりました。
この3項目は、産業全体でも上位を占める項目ですが、特に医療,福祉業界では、人材の流出が能力開発を行う上で、最も深刻な問題となっています。
※厚生労働省「能力開発基本調査」
常用労働者30人以上を雇用している全国の民営企業および事業所から約7,000の企業や事業所を抽出して行われた調査です。ここでのOFF-JTとは業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)をいいます。
詳細は、次のURLのページからご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/104-1.html