育児休業の復帰時に求められる配慮とは?
医療機関でよくみられる人事労務Q&A
Q 育児休業を取得している職員がまもなく復帰します。以前は職場のリーダーを務めていましたが、育児休業中に別の者をリーダーに任命したところ、その職員が優秀で、職場もうまく回っています。このままの体制を続けていきたいので、育児休業からの復帰にあたって役職なしで勤務してもらいたいと思っています。この取扱いに、問題はないでしょうか?
A 育児休業から復帰する者に対しては、育児休業に関する指針や通達に沿って、原職または原職相当職に復帰をさせることが基本であり、育児休業等を理由とする降格などの不利益取扱いは原則として禁止されています。
詳細解説
事業主は人事権を有しているため、業務上の必要性があり、権利の濫用でない限り、役職の任免に関する裁量が認められています。しかしながら、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育介法」)」等において、一定の制約が設けられていることから、その点に留意し対応する必要があります。
原職または原職相当職へ復帰させるのが原則
育介法第22条においては、育児休業後の就業が円滑に行われるよう、職員の配置などについて必要な措置を講ずるよう努力義務が課せられています。具体的には厚生労働省の指針において、育児休業後は、原則として、原職または原職相当職に復帰させるよう配慮すべきであると定められています。
育児休業取得前の「原職」に復帰させられればよいのですが、そうでない場合、どこまでが「原職相当職」といえるのかが問題となります。この点、通達では「原職相当職」の範囲は、個々の事業所における組織の状況、業務配分、その他の雇用管理の状況によって様々であるとした上で、一般的に①休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと、②休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと、③休業前と休業後とで勤務する事業所が同一であること、のいずれにも該当する場合には、「原職相当職」と評価されるものであると示しています。
育児休業を理由とする不利益な取扱いは禁止
更に育介法第10条においては、事業主が育児休業を理由として、降格などの不利益な取扱いをすることを禁止しており、最近でも最高裁まで争われ、事業主が敗訴した裁判がありました。この判決を受けた通達(平成27年1月23日雇児発0123第1号)では、育児休業の申出や取得と時間的に隣接して、不利益な取扱いがあれば、原則、法違反と判断され、その例外となり得るのは、「特段の事情がある」または「本人の同意がある」場合のみであるとより広い解釈が示されています。
こうしたトラブルを予防するには、育児休業前にあらかじめ、原職復帰ができない可能性があることを十分に説明し、本人の同意を得ておく必要があります。今回のケースにおいても、まずは本人に十分な説明を行った上で、同意を得る方向で対応することが求められます。