職員の懲戒処分にあたっての注意点とは!?
医療機関でよくみられる人事労務Q&A
Q 最近、頻繁に遅刻をする職員がいます。お灸を据えるために、何らかの懲戒処分を行っても問題はありませんか?
A 懲戒処分の実施にあたっては、あらかじめ就業規則等で対象となる懲戒事由が根拠として定められていること、事由と処分内容にバランスが保たれていることが必要であり、実際に懲戒処分を行う際には、その事由が生じた背景や事実関係の確認も怠ってはなりません。
詳細解説
職員が問題行動を起こした際、職場の秩序を維持するため、制裁罰として懲戒処分を行うことがあります。その種類は様々で、一般的には始末書を提出させるといった譴責から減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇等のように分類されますが、懲戒処分は、職員に対して不利益を与えるものであるため、実施にあたっては、以下のような点に注意しなければなりません。
1.就業規則等への明記が必要
懲戒処分を行うには、その根拠となる規定の存在が必要です。これは、罪刑法定主義という法律の考え方によるものであり、経営者の恣意性を排除して客観性を高めるという目的もあります。従って、就業規則等において、あらかじめ懲戒処分の内容とその対象となる具体的な事由を列挙しておくとともに、それらを職員に周知しておくことが求められます(労働基準法第89条9号)。
2.事由と懲戒処分の内容のバランスを考慮
ご質問の「頻繁な遅刻」について、就業規則等に定めた懲戒処分が妥当であるのかという点も注意をしなければなりません。様々な裁判例を紐解くと、社会通念上相当と認められない程度に重い懲戒処分をすることは無効となることもあり、事由と懲戒処分の内容とのバランスが保たれる必要があります。
3.事由の背景や事実関係を確認
懲戒処分の実施にあたっては、本人から状況を確認したり、背景の調査も忘れてはなりません。例えば、ご質問にある「頻繁な遅刻」の根本的な原因が長時間労働であれば、必ずしも本人ばかりに問題があるわけでもありませんので、懲戒処分を行うことが不適切ということもあるでしょう。
以上のように、懲戒処分の実施にあたっては、様々な制約がありますが、制裁罰を受けるということは誰しもが気分のよいものではありません。常日頃から注意指導を重ねていれば、こうした事由が生じなかった可能性もあり、見方を変えれば、管理者が管理業務を怠っていたと考えることもできます。そのため問題行動が見られる場合には、まず確実に注意指導を行い、改善を促すということを、懲戒処分を行うにあたっての大前提として考えなければなりません。