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『職員からの年次有給休暇の請求を拒んでも問題ない!?』

医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A

Q 複数の職員が揃って、同日の年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得申請を出してきました。その日は連休明けであることから特に忙しく、揃って休みを取得されると現場が大混乱する危険性が高いので、年休の取得を拒みたいと思いますが、問題はありませんか?

A 職員の年休取得が事業の正常な運営を妨げる場合、事業主には、年休の取得時季を変更する権利が認められています。この事業の正常な運営を妨げる場合とは、代替人員の確保ができず業務に支障を来すといったケースであり、このような時は年休の取得時季を変更することが可能ですが、年休の取得を一切させないということは認められていません。

詳細解説

入職後6ヶ月間継続勤務し、その間に全労働日の8割以上出勤した職員には、年休が付与されます(初年度は10労働日)。そして、職員は付与された年休を基本的には好きな時季に取得することができます。
これに対し、職員が希望した日に年休を取得することが、事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は年休を他の時季に変更してもよいという、いわゆる時季変更権が認められています(労働基準法第39条5項但書)。

この「事業の正常な運営を妨げる場合」の判断基準について、裁判例では「当該労働者の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべき」(電電公社此花電報電話局事件・大阪高裁・昭53.1.31)と示しています。
従って、連休明けといった医療機関では比較的忙しい時季に複数の職員が一斉に年休を取得するということは、人員を他の部署等から確保できない小規模事業所等の場合、事業の正常な運営を妨げると考えることができますので、取得人数を本人たちの話し合い等によって制限して、一部の職員には、他の日に取得をしてもらうという方法が望ましいと考えられます。

もっとも、年休の時季変更権については、あくまでも希望する取得時季を変更してもらうことに過ぎません。そのため、年休の取得申請を拒み、取得時季の変更をすることなく取得をさせないということは労働基準法に違反するため、注意をしなければなりません。
現在、過重労働対策の一環として、年休の取得促進策の導入が検討されています。よって今後は、年休が取得できる体制作りが重要となってくることでしょう。

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