職員の自転車通勤管理の盲点
医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A
Q最近、ニュース等において「自転車事故によって損害賠償」という記事を目にします。当院には自転車通勤の職員が数名おりますが、どのような点に注意して、管理する必要があるでしょうか?
A道路交通法では、自転車を軽車両と定義しているため、厳密にいえば自転車も車両ということになります。そのため自転車での通勤を許可する際には、マイカー通勤同様の管理(保険加入等)が必要となります。
詳細解説
通勤・通学途上の自転車が歩行者と衝突事故を起こし、数千万円の損害賠償を求められるといった事件が最近相次いでいます。
なぜこうした問題が生じるのかといえば、実は自転車は道路交通法第2 条において「軽車両」として定義されており、自動車事故同様に考えられるからです。
そのため、自転車に乗る際には、自動車の運転と同様に安全運転についての義務や責任を負うことになり、事故発生時には、自動車事故と同じような取扱いがされます。
医療機関では、近所に住む職員が自転車で通勤をすることが少なくありませんが、帰宅途上において事故を起こし、加害者側となることがあります。
このとき、医療機関には民法第715 条に定める「使用者責任」を問われるリスクが潜んでいます。
また、自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条において、自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)が、その自動車の運行によって人身事故を発生させた場合には、損害賠償の義務を負うことが定められており、これは民法上の使用者責任よりもかなり広い範囲で考えられています。ここでいう「運行供用者」の認定基準は、「その運行を支配していたか否か」「その運行によって利益が帰属していたか否か」が判断材料とされますので、広範囲なリスクを必然的に抱えてしまうことになります。
マイカー通勤の場合には、このような問題を回避するために、任意保険の加入を義務付け、更には毎年、有効な運転免許証の写しや加入している任意保険証書の写しを提出させることをその許可要件とする例が多く見られますが、自転車については、そうした管理が欠落している傾向があります。
自転車の任意保険としては、任意保険のひとつである『TSマーク付帯保険』(最寄りの自転車店にて加入)や損害保険会社等が提供している自転車用の任意保険サービスがありますので、自転車通勤をする職員については、マイカー通勤同様、こうした保険の加入を義務付け、毎年加入状況を確認することが求められます。