職員に貸与中のパソコンやタブレット端末の使途を確認したい
医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A
Q一部の職員に貸与しているパソコンやiPad 等のタブレット端末について、私的利用がないか調査をしたいと考えています。本人に許可なく実施しても、問題ないでしょうか?調査を行う際のポイントを教えてください。
A貸与とはいえ、ルール等もなく勝手に調査を行うことはプライバシー侵害という問題が発生する可能性があります。実施にあたっては、あらかじめ実施要項等を明確にするといった配慮が求められます。
詳細解説
最近は、パソコンだけでなく、手軽なiPad 等のタブレット端末を用いて業務を行うことが多くなってきました。しかし、一方で私的利用によって、ウイルス感染や職務怠慢等といった問題も発生することもあり、経営者として管理をしたいという考えを持つことは当然でしょう。
そもそも就業時間内であれば、職員は雇用契約に基づいて職務専念義務を負っていますので、貸与された端末を用いて許可なく私的利用をすることは、許される行為ではありません。程度によっては、懲戒処分の検討も必要になりますが、勝手に調査を行うことはプライバシー権の侵害によるトラブルを誘発する可能性があるため、注意が必要です。
無用なトラブルを防止するために、経済産業省からは「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」が発表されており、次のようなポイントが示されています。
- モニタリングの目的、すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること。
- モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。
- モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし、事前に社内に徹底すること。
- モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監査又は確認を行うこと。
以上を踏まえると、調査を実施する前に就業規則等の諸規程において、モニタリング実施に関して、「実施目的や理由」「対象者の範囲」「調査の方法」「調査の時期」といった事項を定め、同時に就業時間中には職務に専念をしなければならない旨も併せて明記しておくと、調査に伴うトラブルの防止に繋がるでしょう。