人材採用にあたって「職員紹介制度」の導入は問題なし!?
医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A
Q職員の確保難が続いています。そのため、現在勤務している職員から知人・友人などに呼び掛けてもらい、採用となれば、紹介料を支払おうと考えています。こうした制度を導入することに問題はありませんか?
A職員が知人・友人などを誘い、採用に至るということはよくあることです。しかし、採用が決定した際に職員へ紹介料を支払うことは、職業安定法に違反する可能性があります。直接的な支払い以外の方法を検討する必要があるでしょう。
詳細解説
現在勤務している職員に知人・友人などを紹介してもらい、採用に至った場合には紹介料を支払うという「職員紹介制度」については、学生時代や前職における横の繋がりにより人材を効率的に確保しやすいという点から、一定の効果が期待できます。ところが、この取扱いは職業安定法第40条に違反している可能性があり、法令違反という認識がないまま運用していると、同法第65条により6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に問われることがあるため注意が必要です。
職業安定法第40条では、「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない」と定めており、紹介料の支払いは報酬と考えられ違法であると解釈することができます。この条文においては、「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」はその適用が除外されるため、賃金規程において手当として定めて運用する方法が考えられますが、労働基準法では「賃金」は労働の対価として支払われるものとされており、紹介料の支払いを賃金と考えることにはやや無理があるように思われます。
この解釈(職員紹介制度の取扱い)を巡っては、行政機関(厚生労働省・都道府県労働局等)によって見解が分かれており、明確に違法性はないと位置付ける根拠がありません。そのため、違法性を指摘されないようにするには、別の方法を採り入れて運用をするということが望ましいでしょう。例えば、以下のような方法が考えられます。
(1)賞与支給時に組織への貢献度が高いことを理由に加算をする
(2)勧誘にあたっての飲食代等を補助する
(3)勧誘行為自体を業務として取扱い、勧誘時間を労働時間として算入する
そもそも、紹介料を支払って「職員紹介制度」を導入する場合、職員にとっては臨時の収入となりますので、インセンティブ目当てに分別なく人を連れてきて、労働意欲や能力の低い人材が組織に入ることで混乱を招いたり、あるいは入職をしたもののすぐに退職をしてしまうというケースも想像できます。こうした問題を回避するには、紹介をしてもらって入職してくれた職員が一定期間働いて貢献がそれなりにあれば、前述(1)で対応するという方法が無難ではないかと思われます。