職場のセクハラをどう予防する!?
医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A
Q夜勤業務の最中に、男性職員が女性職員に対して抱きつくというセクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」という)行為が発生しました。懲戒処分の検討は行いますが、今後、同様の事件が発生しないように組織としてどのような対策を講じたらよいでしょうか?
A職場におけるセクハラ行為は、被害者に苦痛を与えるだけでなく、職場環境の悪化を招きます。また地域に事件の悪評が拡がれば、人材確保という点においてもマイナスとなります。職員研修の実施による啓蒙、相談窓口の設置といった対策を講じたいところです。
詳細解説
職場におけるセクハラとは、相手の意に反する性的な言動により、その言動に対する対応によって仕事上の不利益を与えたり、就業環境を害したりするものをいいます。こうしたセクハラ行為は、近年増加している労働トラブルの一つであり、都道府県労働局によって対策の啓蒙活動が行われていますが、残念ながらトラブルは後を絶たず、中には対策を講じない組織に対する抗議のために女性職員が集団で退職をしてしまうというケースもあるようです。
こうした行為を防止するにあたっては、まずは事業主がセクハラ行為は許さないという方針を明確に打ち出す必要があります。具体的には就業規則やセクハラ防止規程といった規程を整備し、より具体的に懲戒処分内容や管理体制等について明確化することが求められます。そして、それらを実効性のあるものにするために、就業規則やセクハラ防止規程の一部を抜粋してガイドライン等として配布したり、あるいは職員に対して定期的な研修を通じて、そもそもどのような行為がセクハラに該当するのか、セクハラ行為を行ったらどのような懲戒処分がされるのかといったことを周知し、注意喚起しておきましょう。
加えて、一般的にセクハラ行為を受けた際には、被害者が泣き寝入りするというケースも少なくないことから、組織内において気軽に相談ができる体制を確立することも考えなければなりません。その場合、女性職員からの相談は女性の担当者が相談に応じるといったような配慮も行っておきたいところです。また、相談として上がってきたものの、相談を受けた者が大した事案ではないと勝手に判断をし、事実が有耶無耶にされることがないように、外部の弁護士や社会保険労務士といった専門家に相談窓口になってもらうという方法も考えられます。
以上の取組みについては、厚生労働省が定める指針(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針<平成18年厚生労働省告示第615号>」)においても示されていますが、本質としては、行政機関の指導を受けないように対策を講じるというのではなく、多くの職員が安心して働くことができる環境を整備していくことが重要です。上記の内容に限られることなく、充実した組織内のコミュニケーション体制によってセクハラ行為が発生しない風土づくりを心掛けてもらいたいと思います。