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金品紛失事件があり、職員の所持品を検査したい!?

医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A

Q残念なことに、病院内において患者の金品が紛失するという事件が相次いでいます。そのため、職員全員のかばんの中身等を強制的に確認したいと思いますが、問題ないでしょうか?

A職員の所持品検査を強制的に実施することは、プライバシーや人権の侵害行為に当たると考えられており、実施は難しいと判断されています。ただし、実施にあたって合理的な理由があり、就業規則等において根拠が明確になった上で画一的に実施されるのであれば、所持品検査の実施が必ずしも違法と扱われることはありません。

詳細解説

病院内において、患者の金品が紛失するということは、病院の対外的な信用を失墜させることであり、あってはならないことです。しかし、患者が病室にいない間等に、保管をしていたはずの金品が何者かに盗取されてしまったというケースは少なからず発生しているというのが現実です。

そうした際に、例えば外部からの侵入の形跡がなく、廊下等に設置された防犯カメラには職員しか映っていなかったといった場合には、職員を疑わざるを得ず、証拠隠滅をさせないようにその場で職員に対してかばんの中身等の所持品を検査したいという気持ちはよくわかります。しかし、職員の所持品検査については、職員の私用の持ち物を確認することになるため、プライバシーの侵害に当たり、強制的に実施することで人権侵害にも繋がります。よって、所持品検査を実施するにあたっては、慎重な対応が求められ、いかなる場合も認められるわけではなく、一定の条件下では実施できる(以下の4 つを満たせば、その行為自体が適法となる)ということが、実際の裁判例(西日本鉄道事件 最高裁昭和43 年8 月2 日第二小法廷判決)において示されています。

  1. 所持品検査を実施する合理的理由があること
  2. 一般的に妥当な方法と程度で行われること
  3. 就業規則等による明示の根拠に基づいて行わ れていること
  4. 制度として画一的に実施されていること

まず、①については、患者の金品が盗取された時間帯において、職員しか盗取できないであろうと推量される場合には、合理性はあると考えられます。さらに、患者の金品の盗取事件がたびたび発生し、特定の職員が勤務をする曜日や時間帯に集中をしているということであれば、より合理性は高まります。

②については、職員のいない場所で勝手にかばんの中身等を確認するという方法ではなく、職員自身にそれらを広げてもらうなどといった方法が考えられます。中には着衣のポケット内等を疑い、制服を脱ぐことを強要するケースも稀にあるようですが、こうした行為は一般的な方法であるとは到底いえません。

そして、所持品検査の実施にあたっては、その根拠を就業規則において明確に規定し、職員に対して実施することが周知されていることも重要です(③)。こうしたルールが周知されていることで、特定の職員に興味本位で実施するのではないということを明確にし、かつ疑われる時間帯に勤務をしていた職員全員に対して実施するといった画一的な運用(④)によって行われれば、違法性が極めて低いものとなると考えられます。

以上のように、所持品検査を実施するには、①から④のすべてを満たすことが求められますが、盗取していない職員に対しても実施することになるため、精神的に大きな苦痛を与えないように、目的を明確にすると同時に、異性に所持品を見られたくないという職員もいるでしょうから、同性の者が実施するといった配慮も求められます。

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