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『緊急呼出(オンコール)制度を運用する上での注意点』

医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A

Q 職員に対して、休日に呼び出して仕事をしてもらうことがあります。
緊急呼出(オンコール)制度として、1回あたり数千円の手当を支給していますが、運用上注意すべき点があれば教えて下さい。

A 緊急呼出(オンコール)制度下では、その時間帯は具体的な業務に従事していないため、通常労働時間としては扱われませんが、場所的拘束性や時間的拘束性が高い場合には労働時間として解釈され、その時間分の賃金支払いが必要となる場合があります。

詳細解説

患者の容態急変などの緊急時に備え、職員に携帯電話を貸与し、いつでも緊急出勤を要請できるように備えさせるといういわゆる緊急呼出(オンコール)制度については、多くの医療機関において採り入れられています。
ところが運用方法や管理方法によっては、自宅等の滞在時間が労働時間の適用を受ける「待機時間」として扱われることがあり、正しい管理方法を理解しておく必要があります。

そもそも労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を指しますので(三菱重工業長崎造船所事件(最高裁一小平12.3.9判決))、緊急の呼出を受けるにあたって、自宅等の滞在時間がいわゆる「待機時間」と判断されないように運用することが重要です。
この場合、緊急時には速やかに出勤ができるように自宅から離れてはいけない等といった場所的な拘束を受ける場合や、指定時間には必ずすぐに電話を受け勤務先に駆けつけなければならないといった時間的拘束性がある場合には、「労働時間」と考えられる可能性が高いものと考えられます。
実際、様々な労働裁判例において、待機時間は労働時間として認定がされていますので、注意しなければなりません。

一方で、場所的拘束性や時間的拘束性が低く、携帯電話に出なかったことや連絡によって出勤をしなかった場合に注意指導や罰則適用を受けることのない状態であれば、労働時間として扱われる待機時間とは考え難いと捉えてよいでしょう。
事実、緊急出勤に備え自宅待機をする宅直勤務(オンコール勤務)を行っていた産科医が宅直勤務は労働時間であるとして、その時間分の割増賃金支払いを求めた奈良県(医師・割増賃金)事件(最高裁三小平25.2.12決定)では、この宅直勤務制度が産科医同士で独自で運用されたものであり、病院の内規などにもその制度化がなかったことから、その時間帯における労働時間性が否定されました。

以上から、緊急呼出(オンコール)の運用にあたって労働時間として考えられるのであれば、その時間分の賃金の支払いが不可欠となりますので、こうした支払いを避けたいということであれば少なくとも場所的・時間的拘束性を緩和する必要があります。

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